2019年6月から施行されているチケット不正転売禁止法では、一定のチケット転売行為等が処罰対象とされています。
これは刑事責任の世界の話ですが、チケット転売行為を行ったことを契機として、イベント主催会社から開示請求がなされたなどという連絡が届くことがあります。
この点について、を解説します。
目次
1 チケット転売に伴い連絡が届く場合とは
チケット転売に伴い、チケジャムなどの流通会社から電子メールで連絡が届くことがあります。
これは、チケットが転売されたイベント主催会社から流通会社に対してチケットを出品した(転売した又はしようとした)方の情報(例:住所・氏名、アドレスや電話番号等)について、情プラ法5条(旧プロバイダ責任制限法)に基づいて、開示請求がなされたことから、開示に応じるか否かについて、出品者の意見を求めるものです。
2 意見照会が届いた場合の対応
3 イベント主催会社から損害賠償請求をされた場合の対応
イベント主催会社から損害賠償請求をされた場合とは、主に、上記2の意見照会で開示に同意をした場合か、裁判で出品者の情報を開示するのが相当である旨の判断がなされた場合が想定されます。
いずれにしても、イベント主催会社側の弁護士から電子メールで損害賠償請求をされていることとなります。
求められている金額は、置かれている状況に応じて数十万円から100万円程度ではないかと推測されますが、そもそも求められている金額が適切かも含めどのように対応したらよいでしょうか。
(1)賠償請求額について
民事裁判のルールでは、賠償金の請求を求める側において、①権利侵害があったのか(又は契約違反があったのか)、②(あったとして)損害額算出の根拠を示す必要があります。
そのため、求められている金額が適切であるかどうかについて疑問があるときは、上記①及び②について書面での説明を求めることが考えられます。
もっとも、現実には、多数人に対して同種の請求を行っているような場合には、自社で設定した基準など明確な説明を受けることが困難なことが考えられます。
そうなってくると、基本的には賠償金額を所与のものとして、これを受け入れるかどうかを検討することになるでしょう。
この点については、賠償金以外に他の和解条件が設定されているときにも、修正を応じない可能性があると思われます(ただし、賠償金額の分割払には応じる可能性があります。)。
(2)請求されている賠償金額をそのまま受け入れたくない場合
次のような方法が考えられます。
- 債務不存在確認調停といった裁判所での話し合いによる解決
簡易裁判所での話し合いを通じて解決することですが、裁判所が金額について拘束力のある判断を示すものではないことから、お勧めはしていません。
- 債務不存在確認訴訟という裁判手続を通じた解決
求められている賠償金額を支払う義務がない旨の確認を裁判所に求めるものです。
この訴えがなされると、相手方において損害額の主張立証をするなどとして、最終的に支払うこととなる損害額が認定されるのが通常です(そもそも支払う必要があるのかどうかについても判断されます。)。
もっとも、コスト(弁護士費用や時間)がかかってしまうことから、求められた賠償金を払うことの方がコスト的にはよいということもあります。
(3)注意点
本項(1)及び(2)は民事責任を念頭においたものですが、チケット転売は刑事上の責任が生じうるものです。
そのため、裁判手続を安易に選択したのでは反省していないのではないかとして刑事責任の面では不利になってしまう可能性があります。
この点も踏まえた上で、どのような選択をとるべきなのかを考える必要があります。
4 まとめ
どのような解決がよいのかが分からないというお悩みがあると思いますので、HPのお問い合わせ欄からお気軽にお問い合わせください(相談料は一回あたり1万1000円です。)。
本記事の分野については受任をしても経済的利益をお届けするのが難しいことから、ご自身で御対応いただくことを前提としたアドバイス(Web相談や電話相談も含む)を実施しております。心理的ストレスからご自身で対応するのが困難という方については協議のうえ受任をさせていただくこともあります。