X(旧Twitter)・Instagram・Threads(スレッズ)などのSNS、Googleマップなどの口コミ、YouTube・ツイキャスなどの動画サイト、5ちゃんねる・爆サイなどの掲示板では、誹謗中傷等の不適切な投稿・配信が行われることがあります。
このようなインターネット上における不適切な投稿・配信が匿名でなされた場合には、誰に対して責任追及をすればよいのかが分からないのが通常です。
この匿名性を暴いて発信者を特定するための制度が「発信者情報開示請求」となります。
発信者を特定した後には、被害者から発信者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求が行われることが想定されます。
損害賠償請求の内訳には、慰謝料や弁護士費用等のほかに、「調査費用」という項目があります。
ここでは「調査費用」について解説します。
目次
1 損害賠償請求の根拠は?
名誉毀損・侮辱が問題となる場合には、不法行為が損害賠償の根拠となります(民法709条・710条)。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
もっとも、民法の条文には「損害を賠償する責任を負う」などとあるのみで、具体的な賠償金額は定められていません。
そのため、損害賠償請求をする側で「損害額」の主張・立証を行うこととなります。
2 損害項目
「損害額」の主張・立証を行うにあたっては、損害項目ごとに損害額を主張していくことが通常です。
インターネット上の名誉毀損・侮辱であれば、「慰謝料」「弁護士費用相当額」のほか独立した項目として「調査費用」が主張されることが多いです(ただし事案によっては「逸失利益」「営業損害」などが主張されることもあります。)。
3 損害項目:「弁護士費用相当額」
「調査費用」と似た項目として「弁護士費用相当額」があります。
勘違いをしやすいのですが、損害賠償請求をするにあたって実際に弁護士に支払った(及び支払うこととなる)金額とイコールになるものではありません。
「訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである」(最一小判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁)という判例があります。
これを踏まえ、不法行為に基づく損害賠償請求においては、損害額の10%程度が「弁護士費用相当額」として裁判所に認められることが多いことから主張されるものです。
例えば、100万円の慰謝料を請求するときには、弁護士費用相当額として10万円を請求することとなります。
4 損害項目:「調査費用」
(1)「調査費用」とは何か
「調査費用」とは、発信者を特定するための発信者情報開示請求について弁護士に支払った費用を指すことが多いです(開示命令手続の申立費用といった当該手続内で申立人負担とされる費用は含みません。)。
例えば損害賠償請求の前段階である発信者情報開示請求の着手金・報酬として合計44万円を支払っていたときには、後続の損害賠償請求において「調査費用」として44万円を請求することが挙げられます。
(2)「調査費用」は認められるのか
「調査費用」が認められるかどうかについて見解を示した最高裁の判例は現時点ではありません。
下級審の裁判例では、
- 認めた例
- 認めるとして全額を認める例/一定割合を認める例
- 認めない例
など統一的な見解はなく事案次第というのが現状と考えられますが、「調査費用」は一定程度考慮される趨勢にあるという印象です。
この点について、詳細な分析を行ったものとして、「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」(法務省民事局 令和8年4月)が法務省のサイトにおいて公開されていますので、気になる方は参照して下さい。
5 まとめ
「調査費用」を含めた損害賠償請求をしたい/された場合について相談を承っています。
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