結婚をすれば、同居生活を送り、離婚をするときには同居を解消するのが一般的です。
また、協議により離婚ができないときは、別居をした上で引き続き離婚に向けての話し合いをすることも多いです。
こうした「別居時期」(及びその後の別居期間)には法的にはどのような意味があるでしょうか?
ここでは、離婚における「別居時期」(及びその後の別居期間)の持つ法的な意味を解説します。
目次
1 「別居時期」(別居期間)が問題となる場合
「別居時期」(及びその後の別居期間)の法的意味を考える際には、どのような場面で「別居時期」等が問題となるかを考えればよいです。
その場面は、主に次のようなものです。
- 離婚訴訟において離婚請求の可否を基礎付ける事情として
- 財産分与の算定をする際の基準日として
それぞれについて解説をします。
2 離婚訴訟において離婚請求の可否を基礎付ける事情
(1)離婚訴訟における法定の離婚原因
夫婦間で離婚の話し合いをしたものの合意に至らない場合には、まず離婚調停という家庭裁判所での話し合いを行い、これが不調となったときに離婚訴訟(最終的には裁判官が離婚の可否を判断します。)を行うこととなります。
この離婚の可否の判断は民法に定める離婚原因に該当するかどうかという観点からなされます。
この離婚原因の一つとして「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)があります(こちらの記事もご参照ください)。
(2)別居期間のもつ意味
上記の離婚の可否の判断(=「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の該当性)を基礎付ける重要な事情の一つが別居期間です。
夫婦は同居して共に生活を営むことが本質であることからすると、別居が相当な期間に及ぶことが自体が婚姻関係の破綻を事実上推測させる重要な事情になるものと考えられています。
したがって、婚姻関係破綻という離婚原因を判断する上で、別居期間は重要な意味を有しているといえます。
もっとも、民法上、何年間別居が継続すれば離婚できるというような定め方はされていませんので、別居期間のみをもって離婚の確定的な見通しをすることは難しいでしょう。
3 財産分与の算定をするに際の基準日として
夫婦はともに協力をして生活をするとともに財産を築いていくこととなります。
そのため、離婚にあたり、婚姻をして以降築いた財産の2分の1を配偶者に分与しなければなりません。
この2分の1の計算をするためには、基準日(分与対象財産を確定するための基準日で、財産の評価額などを確定する必要があります。)を設定する必要がありますが、通常は別居時が基準日となります。
他方で、別居をしていない場合、例えば同居をしながら離婚調停や離婚訴訟を進めているときには、便宜的に調停申立日や訴訟提起日を基準日とすることも考えられます。
なお、離婚訴訟では短期間の別居でない場合において離婚請求と共に財産分与請求がされているときには、離婚請求の可否にかかわらず、財産分与に関する整理がされるのが一般的です。
4 「別居時期」(別居期間)に争いがあるケース
「別居時期」(別居期間)には以上のような意味がありますが、これに争いが生じるケースもあります。
例えば、単身赴任中に離婚請求をされた、別居や同居を繰り返しているなど別居時期が曖昧な場合、家庭内別居が問題となる場合などです。
こうしたときには、財産分与の本質である夫婦間の経済的協力関係がどの時点で失われたかなどという観点から個別に判断されます。
5 まとめ
離婚における「別居時期」(及び別居期間)は、まずそもそも離婚ができるのかという判断で問題となり、離婚ができる(又は離婚をした)場合において財産分与を計算する基準日となるものです。
離婚においては様々な考慮が必要となりますので、まずはお気軽にご相談ください。