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離婚訴訟における離婚原因とは

2024-04-05
離婚・男女関係

配偶者と離婚をするという決断をしたときには、一般的には、ご本人同士でのお話し合いにより離婚をするのが望ましいといえます。

もっとも、様々なご事情からお話し合いがスムーズに進まないときには、裁判所で離婚に関する手続を進めることが選択肢として出てきます。

この裁判所での手続については、基本的に話し合いで解決をする離婚調停を行う必要があります。

もっとも、離婚調停が不成立となったときには、離婚訴訟で離婚の可否を裁判官に判断してもらう必要があります。

この判断は民法に定められた「離婚原因」を満たすかどうかの判断となり、「離婚原因」を満たしていれば離婚が認められ、満たしていなければ離婚は認められません。

ここでは、離婚訴訟における離婚原因の概略を解説します。

目次

【主なチェックポイント】

✓基本的には離婚訴訟を行う前に、離婚調停を行う必要がある

✓離婚訴訟で離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離婚原因があることが必要

✓別居期間、性格の不一致、モラハラなどは離婚原因を基礎づける事情の一つ

1. 離婚訴訟が必要になる場合とは

離婚に関する手続の流れは、概ね次のように進みます。

そのため、離婚訴訟が必要になる場合とは、離婚調停を行ったものの、離婚に関する話し合いがまとまらず、離婚の可否を裁判官に判断してもらう必要がある場合となります。

なお、離婚訴訟においても、和解が成立すれば裁判官による判断を経ることなく、離婚が可能です。

①離婚協議

②離婚調停

③離婚訴訟←この記事は、主にこの部分に関わる事項です。

【各手続の概要】

手 続概 要
離婚協議夫婦間で任意の話し合いを行い、離婚に関する話し合いを進めていく方法です。
協議離婚ともいいます。
もっとも、ポピュラーな方法であるといえます。
離婚調停夫婦間での任意の話し合いが難しい場合などに、家庭裁判所において、家事調停委員を介して、離婚に関する話し合いを進めていく方法です。
あくまで話し合いによる離婚が前提であり、話し合いがまとまらないときには、調停は不成立となります。
離婚訴訟離婚調停を行ったものの、離婚に関する話し合いが決裂した場合に、家庭裁判所に対して、離婚を求める旨の請求を行う方法です。
離婚訴訟では、最終的には裁判官による離婚を認める/認めないといった判断が下されることとなります。
なお、離婚調停を経ることなく、当初から離婚訴訟を起こしたときには、離婚調停を行うことが適当でない場合以外は調停に付されることとなりますので、基本的にはまずは離婚調停を行うこととなります(調停前置主義)。

2. 離婚訴訟を行う裁判所(管轄)

離婚訴訟は、夫又は妻の住所地を管轄する裁判所に提起することができます(人事訴訟法4条1項)。

例えば、妻が原告となって離婚訴訟を提起する場合において、妻が立川市に居住し、夫が浦和市に居住しているようなときには、浦和市を管轄するさいたま家庭裁判所のほか、立川氏を管轄する東京家庭裁判所立川支部に対して、当該訴えを提起することができます。

3. 離婚訴訟における離婚原因

離婚訴訟では、離婚に関する諸事項について、当事者双方で主張立証を積み重ねていくこととなりますが、裁判官が「離婚を認める」判断を行うためには、民法で定められた離婚原因(民法770条)を満たしている必要があります。

審理の結果、離婚原因を満たしているときには、相手の同意がなくても、離婚が認められます。

反対に、離婚原因を満たしていないときには、離婚は認められないこととなります。

この離婚原因は、次のものが列挙されています。

民法上の離婚原因(770条第1項)
1号配偶者に不貞行為があったとき
2号配偶者から悪意で遺棄されたとき
3号配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4号配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5号その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

(1)配偶者に不貞行為があったとき(1号)

不貞行為とは、「配偶者のある者が自由な意思にもとづいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」とされています(最一小判昭48年11月15日民集27巻10号1323頁)。

なお、不貞行為があるときには、不貞行為を行った配偶者に対する慰謝料請求も可能です。

(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)

「悪意の遺棄」とは、正当な理由のない夫婦間の同居・協力・扶助義務(民法752条)の放棄をいうものとされます。

もっとも、2号に該当すると認定される例は多くはない印象で、こうした事項であっても、5号を基礎付ける事情に整理されることが多い印象です。

(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)

「3年以上の生死不明」とは、配偶者の生死不明の状況が3年間継続していることです。

(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)

「強度の精神病」とは、単に精神病にかかっているだけでは足りず、強度のもので回復が困難な状況にあることを必要とするものとされています。

この「強度の精神病」(4号)に該当する場合について、「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、直ちに婚姻関係を廃絶することは不相当」として後述の裁量的棄却事由を定める民法770条2項を適用した裁判例があります(最判昭33年7月25日民集12巻12号1823頁)。

(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な事由をいうものとされます。

主観的には夫婦双方が婚姻を継続する意思がないこと(主観的要素)、客観的には婚姻共同生活の修復が著しく困難であること(客観的要素)を意味するとされますが、具体的な事情を主張・立証することで当該事由へ該当することを理由として離婚を求めていくこととなります。

具体的には、配偶者に不貞行為がある(1号)など明確な離婚原因がないときには、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があること」を基礎づける事情を主張していくことが多く、離婚訴訟においてはこの「事由」への該当性が争点となることが多い印象です。

例えば、長期間の別居、性格の不一致、モラハラ・暴言、暴力、性格の不一致などは、この「事由」を基礎づける事情となります。

〇年間別居しているので、必ず離婚が認められますかという質問を受けることがよくありますが、〇年間別居すれば離婚が認められるという関係にはなく、長期間の別居はこの「事由」を基礎づける事情の一つにすぎないものです(とはいえ、別居が長くなればなるほど離婚を請求する側にとっては有利な事情となっていきます。

)。

4. 裁量的棄却事由

民法上は、以上の3(1)から(4)に掲げる事由がある場合でも、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」(民法770条2項)ものとされています。

もっとも、実際上、こうした規定が適用される例は多くはないという印象です。

なお、裁量的棄却事由の対象に「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)は含まれておりません。

5. まとめ

離婚訴訟における離婚原因は、とくに「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)への該当性が問題となることが多く、その該当性の判断や訴訟における主張立証は弁護士でないと難しい面があります。

離婚訴訟の提起を検討している(離婚訴訟を提起された)、或いは離婚訴訟も視野に離婚調停を進めたいという方は弁護士へのご相談をお勧めしております。

6. 参考

〇民法

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

執筆者

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弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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