大澤法律事務所

弁護士紹介

業務内容

アクセス

記事一覧

042-519-3748

営業時間 平日10:00 - 20:00

お問合せ

メニュー

有責配偶者からの離婚請求:離婚の可能性とその対応策

2024-11-28
離婚・男女関係

離婚をしたいと考えた場合、まず離婚に関する話し合いを行い、これが成立しない場合には離婚調停となり、これも成立しないときには離婚訴訟を起こす、という流れとなります。

それでは、離婚をしたいと求める側に有責性がある場合には、離婚することができるのでしょうか。ここでは、「有責配偶者からの離婚請求」について、概略を解説します。

目次

1 有責配偶者とは

有責配偶者とは、離婚の原因を作り、婚姻関係を破綻させたことについて責任のある配偶者といえます。

例えば、不貞行為を行った配偶者やひどい暴力を振るっていた配偶者が典型例です。

2 有責配偶者が離婚したい場合の流れ

有責配偶者が離婚したいと考えた場合における流れ自体は、有責性の有無にかかわらず、通常の離婚請求の場合と同じです。

すなわち、①まず離婚に関する話し合いを夫婦間で実施し、②これが成立しない場合には家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てて話し合いを行うこととなります。③この離婚調停でも話し合いが成立せずに調停不成立となったときに、家庭裁判所に対して離婚訴訟を提起することとなります。

これらのうち、①と②は、いずれも話し合いによることから、配偶者が離婚に同意すれば離婚することは可能です。

もっとも、有責性があることにより、感情的に話し合いが難しい、当人同士での話し合い自体を拒否される可能性がありますので、弁護士に依頼することを検討されるとよいといえます。

有責性により慰謝料等が生じるときには、適切な金額を支払うことは当然の前提といえます。

では、配偶者が話し合いによる離婚に応じてくれればよいのですが、応じてくれない場合にはどのようになるのでしょうか。

3 有責配偶者からの離婚訴訟は原則として認められない

離婚訴訟は、裁判官が法定の離婚原因があるものと認めたときに、配偶者の意思如何にかかわらず、離婚を認める旨の判決を言い渡す手続です(法定の離婚原因については、こちらの記事をご確認ください。)。

そのため、離婚調停を行ったものの、調停不成立となっときには、離婚訴訟が選択肢となります。

もっとも、離婚訴訟を、有責配偶者が起こしたときには、離婚が認められるハードルは非常に高く、原則として離婚は認められないものと考えられます

これは、自らが婚姻関係を破綻させたにもかかわらず、その一方的な要求により離婚を認めることは通常認められないという考えによるものです。

なお、離婚訴訟であっても、配偶者が離婚に関する条件に同意すれば、裁判上の和解により離婚をすることもできます(この場合については法定の離婚原因は不要です。)。

4 有責配偶者からの離婚訴訟が例外的に認められる場合

有責配偶者からの離婚訴訟は原則として認められませんが、有責配偶者からの離婚請求を例外的に認めたリーディングケースがあります。

最高裁の裁判例において「有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である。」(最高裁大法廷判決S62・9・2民集41巻6号1423頁)として、有責配偶者からの離婚請求を認めたものです。

これは、以下の考慮要素をも考慮して、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断したものです。

  • 別居期間:夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当程度の長期間に及んでいること
  • 未成熟子の不存在:夫婦間に未成熟の子が存在しないこと
  • 離婚を認めることが社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと:相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと

これらの考慮要素のうち、別居期間は客観的に認定可能でかつ時が経過するにつれて離婚を求める側に有利な事情となりますが、考慮要素等を総合的に判断した離婚の可否が判断されることとなるため、別居期間が何年あれば必ず離婚請求が認められるというような単純な関係にはないことに注意が必要です。

いずれにしても、見通しを踏まえた訴訟対応が必要となります。

5 有責性がある場合の対応策

有責性がある場合には、離婚を求めるといった観点から不利であることは否めません。

もっとも、有責性があるにもかかわらず離婚をしたいという場合であっても、上記①夫婦間での話し合いや②離婚調停を通じた話し合いによる解決を試みることとなるため、有責性に伴う責任(慰謝料の支払など)については真摯に受けとめる必要があります。

その結果、離婚について合意が得られないときには、冷却期間を持つなど個別の事情に応じた対応を行うこととなりますが、調停などを通じて定められた婚姻費用の負担を怠らないことは当然です。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

お問合せ

大澤法律事務所

〒190-0012 東京都立川市曙町1丁目12番17号 原島ビル4階

042-519-3748

営業時間:平日10:00 - 20:00