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隣の家から竹木の枝が越境している場合の対処方法:近隣トラブル

2024-09-14
不動産

戸建住宅地域において、一軒家の土地上に植えられた竹木が成長し、隣家の敷地上に枝を伸ばして越境してしまうことがあります。このような場合、事実上、越境した枝部分からの落ち葉等の掃除を越境された土地所有者において行わなければならないことがあります。

隣家から竹木の枝が越境している場合、どのような対処方法があるのか、その概略を解説します。

なお、ここでは、竹木が生育して隣の土地に枝を越境させている土地を「隣接地」、この枝により越境されている土地を「越境された土地」と表現しています。

目次

1 はじめに:民法233条

まず隣家から竹木の枝が越境することにより、敷地上に落ち葉が落ちる等の迷惑がある場合、越境している部分の枝を切除してもらう等の要望を隣人に行い、これに任意に応じてもらうことが望ましいといえます。

もっとも、何らかの事情により、対応してもらえないことも考えられます。

こうしたときには、越境した枝による迷惑については甘受しなければならないのでしょうか。

この点に関して民法233条が定められています。

以下では、主に民法233条を念頭に解説致します。

2 原則は竹木の所有者に枝を切除させる必要がある

隣地の竹木の枝が隣接地に越境してきた場合、越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除するよう請求することができます(民法233条1項)。

これが原則です。

3 一定の場合には、越境された土地の所有者は自ら枝を切除することができる

次のいずれかに該当する場合には、越境された土地の所有者は自ら越境してきた部分の枝を切除できるとされます(民法233条3項)。

なお、越境している竹木は隣地所有者の所有物であるため、3項に基づいて切除したとしても、その枝の所有権は隣地所有者にあり、切除した枝を越境されている土地の所有者が勝手に処分してよいのか疑問が生じます。この点について、越境されている土地の所有者は、3項に基づいて切除した枝の所有権を取得し、その枝を自由に処分できるものと考えられています(前記書51頁)。

(1)切除するよう催告したものの相当の期間内に切除しない場合(同項1号)

「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき」です。

ここでいう「相当の期間内」とは、竹木の所有者が竹木の枝を切除するために必要と考えられる期間であり、「個別の事案にもよるが、基本的には、2週間程度を要すると考えられる」(「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」(一般社団法人金融財政事情研究会50頁)とされています。

(2)竹木の所有者を知ることができないとき等(同項2号)

「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」です。

現地調査のほか、不動産登記簿等の公的記録により所有者の調査を行う必要があります。

(3)急迫の事情があるとき(同項3号)

「急迫の事情があるとき」ですが、例えば、「台風等の災害により枝が折れ、隣地に落下する危険が生じている場合」などが想定されるとされます(前記書50頁)。

4 越境された土地の所有者が民法233条3項に基づき自ら枝を切除する場合に隣地を使用できるか

越境された土地の所有者は、民法233条3項に基づき枝の切除を行う場合には、その枝の切除のために必要な範囲内で、隣地を使用することができます(民法209条1項3号)。

もっとも、隣地使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者や現に使用している者にとって損害がもっとも少ないものを選ばなければならないとされています(同条2項)。

5 越境された土地の所有者が自ら枝を切除した場合の費用負担

例えば、越境された土地の所有者が、業者に費用を支払って、枝を切除した場合、その費用を隣地所有者に請求できるかどうかについては、ルールが定められていません。

もっとも、竹木の所有者は枝の切除義務を負っているところ、土地所有者の行動によりこの義務を免れることから、基本的には、土地所有者は、不当利得等を根拠として、枝の切取費用を竹木の所有者に請求することも可能と考えられています。

6 具体的な対処例

(1)民法233条に基づく対応

繰り返しになりますが、ご近所トラブルを避けるためにも、隣接地の竹木の枝が越境している場合には、まず越境されている土地の所有者としては、隣地所有者に対して、「口頭で」、任意の対応を求めるのが望ましいです。

この任意の対応を求めたものの対応がなされないときに、枝を切除するよう「書面で」催告することが考えられます。

ここで「書面で」というのは、言った・言わない等のトラブルを避けるため、内容証明郵便で行うことが望ましいです。

この催告にもかかわらず、何らの対応もなされないときには、民法233条3項に基づき、越境されている土地の所有者自らが枝の切除を行うこととなります。この際、費用が生じれば、この費用を隣地所有者に請求することとなります。

(2)民事調停による話し合い

もっとも、竹木は日々成長するものであり、越境する都度、催告を行うというのでは越境された土地の所有者のストレスは大きなものがあります。

そこで、隣地所有者との間で、竹木の取扱いについて何らかの合意を行うことが考えられます。

勿論、当事者間での話し合いによる解決が望ましいのですが、越境する事態が度々生じているような状況下では、当事者間での話し合いが難しいのが実情ではないかと思われます。

こうしたときには、裁判所での民事調停を通じて、解決することが考えられます。

民事調停とは、ある特定のテーマについて、裁判所主宰の下、話し合いによる解決を試みる手続です。

この手続により合意がされたときは、合意内容が書面化されることとなります。

もっとも、あくまで話し合いによる手続ですので、相手に話し合う意思がないときには、民事調停により解決することは難しいです。

7 隣地の竹木の根が境界線を越えるとき

竹木の枝が越境している場合ではありませんが、「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」ものとされています(民法233条4項)。

8 弁護士に依頼するメリット

隣地の問題は、ご近所トラブルであることから、当事者間で話し合うときには、日々顔を合わせるなどストレスが大きなものとなります。

そこで、弁護士に依頼することで、こうしたストレスを緩和しつつ、第三者的観点からのアドバイスを受けられるというメリットがあります。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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