婚姻費用・養育費についてよくある質問を次のとおりまとめました(養育費に関する一般論についてはこちらの記事、婚姻費用に関する一般論についてはこちらの記事もご参照ください)。回答内容は、一般的な場合を想定しているため、個別の事情に応じた修正があり得ることはご留意ください。
なお、文中にあります「算定表」とは、「養育費・婚姻費用算定表」のことを指しています。
目次
Q1 婚姻費用・養育費を任意に支払ってもらえないのですが、どうしたらよいでしょうか
直ちに家庭裁判所に対して婚姻費用分担請求・養育費請求調停を申し立てることをお勧めしています。家庭裁判所での手続では、最終的には審判に移行し、支払う側の同意なしに裁判官がその金額を決めます。
Q2 婚姻費用・養育費を支払う側の基礎収入が分かりません。このような場合、どのように収入が決まるのですか。
調停・審判手続を通じて、双方の基礎収入が分かる資料(例:源泉徴収票)を出し合うこととなりますが、一方が資料を提出しない、あるいは出席をしないときには、基礎収入が分からない場合があります。このような場合には、個別の対応となりますが、例えば、裁判所から勤務先に対する調査嘱託により収入を把握することなどが考えられます。それでも分からないときには「賃金センサス」を用いて収入が認定されることもあります。
Q3 生活保護を受給していますが、保護費は収入に加算されるのでしょうか。
収入には加算されません。例えば、生活保護費のみで生計を立てているときには、基礎収入は0円として婚姻費用・養育費の金額が算定されることとなります。
Q4 婚姻費用・養育費を支払う側が住宅ローンを支払っていますが、これらの金額の決定にあたり考慮されるのですか。
婚姻中に取得した自宅の住宅ローンは離婚に伴う清算問題として解決される問題となりますので、月々の住宅ローンの金額にかかわらず、通常、算定表の範囲内で決まることとなります。
Q5 児童手当を受給していますが、婚姻費用・養育費の金額の決定にあたり考慮されるのですか。
児童手当を受給していても、児童手当を受給している親側の収入に加算されることにはなりません。これは、児童手当が児童の福祉という政策目的のためのものだからです。
Q6 婚姻費用・養育費を求めている側が親から援助を受けています。この援助額を収入に加算するのでしょうか
親からの援助は通常贈与と考えられるので、基本的には加算されないものと考えられます。
Q7 算定表をあてはめると、4万円~6万円の範囲です。この場合、中間値である5万円が妥当な金額となるのでしょうか。
夫婦間の収入が交わる箇所が上限に近ければ6万円に近い金額となり、反対に下限に近ければ4万円に近い金額が考えられます。もっとも、実際上は、中間値で折り合うということもよく見られます。
Q8 婚姻費用・養育費を支払う側の収入が上限値(給与所得では2000万円)を超えていますが、どのように婚姻費用・養育費が決まるのでしょうか。
個別的事情に応じた裁判官の判断により決まるため一概にはいえませんが、例えば算定表の上限値を上限とする考えや算定表のもととなる計算式に立ち戻って計算をする考えなどがあり得ます。
Q9 算定表で想定されている子どもの数を超える子どもがいますが、この場合どのように婚姻費用・養育費が決まるのでしょうか。
算定表からは一義的に金額を導くことが出来ないことから、個別的事情に応じて算定されることとなります。その算定方法には、算定表のもととなる計算式に立ち戻って計算をする考えなどがあり得ます。
Q10 算定表から求められる金額では、子どもの私立学校の授業料等や塾代には足りません。算定表から求められる金額に加算されることはあるのでしょうか。
算定表は公立の中学・高校の教育費を指数として考慮しているため、私立の教育費は考慮していないこととなります。そのため、子どもが私立学校に通うときには、算定表による金額に双方の収入に応じた不足額を加算するかどうかが検討されることになりますが、最終的には個別判断となります。必ず加算されるというものではありません。
Q11 婚姻費用・養育費の金額を変更(増減)したいのですが、どのような方法があるでしょうか。
当事者間での任意の話し合いを試み、これが困難なときには家事調停・審判により解決することとなります。この場合には「事情変更」が必要となります。
Q12 一旦決められた婚姻費用・養育費の金額を変更(増減)するためには「事情変更」が必要と聞きました。事情変更にはどのようなものがあるのでしょうか。
客観的事情の変化が該当すると考えられます。例えば、夫婦の収入の変化、扶養状況の変化、子どもの成長などです。
Q13 裁判所で決まった婚姻費用・養育費を相手方支払ってくれません。強制的に回収する方法はあるのでしょうか。
強制執行手続により回収することが考えられます。これには給与の差押えなどがあります。