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賃料不払いの場合における建物明渡請求の一般的な流れ

2024-11-29
不動産

アパートや賃貸マンションなどの収益物件により収益を得ている方にとって賃料が約束どおり支払われるかどうかは重大な事項です。

残念ながら一定の確率で賃料滞納が生じてしまいます。

このような場合における建物明渡請求の一般的な流れについて、概略を解説します。

目次

1 賃料不払いが起きたときの対応

収益物件を所有している方は、その管理を管理会社に委託していることが多いと思われます。

そこで、管理会社を通じて(自己管理のときには自ら)賃料を直ちに支払うよう督促することとなります。

このような督促により賃料を支払ってくれればよいのですが、何らかの事情により、賃料を支払わない場合もあります。

このような場合には、直ぐにでも退去してほしいと考えるのが通常です。

もっとも、無理矢理追い出すことはできず、民事訴訟及びその後の執行手続を通じて、退去させることが一般的です。

2 手順1:賃貸借契約の解除

督促にもかかわらず賃料の支払をせず、数月分賃料を滞納しているときには、不払賃料の請求と同時に賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除を通知することで、建物の明渡しを求めることとなります。

この意思表示は、後日の裁判における証拠とするために、内容証明郵便で行うことが望ましいです。

なお、ここで「数月分」としているのは、1月分の滞納だけでは賃貸借契約の当事者間における信頼関係が破壊されているとまでは言いがたいとも考えられるためです。

3 手順2:建物明渡請求訴訟の提起

手順1での建物の明渡請求にもかかわらず、任意に建物から退去しないときには、裁判所に対して、建物の明渡を求める旨の民事訴訟を提起することとなります。

勿論、建物の明渡のほか、不払いとなっている賃料の支払を求めることもできます。

この裁判の帰結としては、主に次のようなものが想定できます。

(1)裁判上の和解による場合

数月分の賃料不払が事実であれば勝訴判決となります。

もっとも、賃料の不払いを生じさせている賃借人が裁判所に出頭したときには、もう少しの間だけいさせてほしいなどと希望を伝えてくることもあります。

実際の上の問題として、勝訴判決を取得したとしても、任意の明渡しをしないときには、後述の民事執行手続によることとなりますが、費用負担が大きいことも踏まえて、裁判上の和解を選択することもあり得ます。

裁判上の和解の内容は、「○日までに明け渡す」「不払賃料については毎月○円ずつ支払う」などという定めがなされます。

この裁判上の和解にもかかわらず、約束の期日までに明け渡さないときには、民事執行手続により明渡しを実現することなります(裁判上の和解には勝訴判決と同様の効力があります。)。

(2)判決による場合

賃借人が裁判所に出頭しない、或いは裁判上の和解が成立しないときには、判決が言い渡されることとなります。

その内容は、「建物を明け渡せ」「不払賃料を支払え」「明渡しまで賃料相当損害金を支払え」というものが想定できます。

この判決が賃借人に送達されてから2週間内に控訴がなされないときには、判決が確定することとなります。

4 手順3:建物明渡の強制執行

手順2で、(1)裁判上の和解をしたものの約束を反故にして建物を明け渡さない場合、(2)勝訴判決にもかかわらず判決に従わずに建物を明け渡さない場合には、任意の明渡しが期待できないものとして、建物明渡の強制執行を行うこととなります。

この強制執行は、概ね以下のように進みます。

(1)強制執行の申し立て

賃借人が任意に建物を明け渡してくれないからといって、裁判所が自動的に判決等の内容を実現してくれるわけではありません。

賃貸人において、別途、裁判所に対して、強制執行の申立を行うことが必要です。

この申立には、債務名義といって、勝訴判決や和解調書等が必要となりますので、裁判を行わずに、当該申立を行うことはできません。

細かな点ですが、執行文や確定証明書など、強制執行の申立用に準備すべき資料があります。

(2)執行官による催告

強制執行の申立が認められたときには、裁判所の執行官とのやりとりにより、催告日が決まります。

この「催告」日に行われることは、執行官が現場に直接赴き、(相手がいれば)退去するよう催告するとともに催告書を貼付し、(相手がいなくても)退去を求める催告書を室内に貼付することとなります。

この催告書には、「○日までに退去せよ」という趣旨の記載があります。

この催告日には、執行官のほか、執行官の指定する執行補助者が同行するのが通常です(例:鍵を解錠する業者)。

(3)建物明渡しの断行日

上記(2)の催告にもかかわらず、相手が建物を明け渡さないときには、いよいよ建物明渡しの断行となります。

これは、執行官とその執行補助者が建物に赴き、その荷物を強制的に運び出すとともに鍵も交換することで、強制的に建物の明渡しを実現するものです。

(4)強制執行の費用感

もっとも、強制執行には多くの費用負担があるという課題があります。

申立前に、負担額がいくらになるのかを確定させることはできません。

というのも、(2)催告により任意に明け渡されたときにはその後の(3)断行が不要となるため断行日に発生する費用が不要となるためです。

そして、(3)断行日に具体的にいくらかかるのかを申立前に知ることができない理由は、建物内にある荷物等によって断行を実現する補助者の人数(手作業で相手の荷物を運び出すため量が多ければ人工代も多く発生します。)、トラックの手配及び保管場所の費用等が分からないからです。

催告日以降であれば、同日に執行補助者が立ち会うことにより概ねの見積もりを知ることは可能ですが、申立て前には知ることができません。

あくまで印象となりますが、断行まで実施したときには業者に対して支払う金額だけでも数十万~100万円を超えるイメージです。

5 まとめ

賃料不払いが生じたときには、督促→賃貸借契約の解除の内容証明→建物明渡の民事訴訟→強制執行、という流れとなります。

賃料不払いを生じさせている相手と直接やりとりをすることは精神的負担となるだけでなく、トラブルにも繋がることです。

また、一連の手順を円滑に踏んでいくことは慣れていない方にとっては困難といえます。

そこで、賃料不払いが生じたときには、弁護士への相談を勧めています。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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