地方裁判所から特別送達により不倫を理由とする慰謝料の支払いを求める旨の訴状が届く場合があります。
このような場合、どのように対応することが求められるでしょうか、訴状が届いた後の主な流れを念頭に、その概略を解説します。
目次
1 訴状にはどのような内容が記載されているか
不倫を理由とする慰謝料の支払いを求める旨の訴状は、茶封筒(特別送達)により届きます。
内容物は、原告が裁判所に提出した訴状、証拠説明書及び証拠(甲号証)が考えられますが、そのほかに裁判所からの事務連絡や答弁書の書式などが同封されていることが多いといえます。
これらのうち、訴状には、原告が被告に対して求める内容とその理由が記載されています。具体的には、次のとおりです。
- 「請求の趣旨」欄:原告が求める請求内容(例:「原告は被告に対して金300万円及び訴状送達の日から支払い済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え」)
- 「請求の原因」欄:請求の根拠(例:不倫に関する事実関係やこれにより離婚にしたことなど)
2 訴状が届く場合とは
訴状が届く場合には、予め訴状が届くことが予想される場合とそうではない場合とがあります。
前者については、本人または弁護士を通じて裁判外で交渉を行ったものの、和解することができず、訴えを提起されたという場合です。
後者については、原告側が裁判外での交渉を選択せずに、訴え提起をすることを選択した場合です。
3 訴状が届いた場合の対応方法
訴状が届いた場合には、突然のことに混乱してしまうと思います。また、ご家族がいるときには、訴えられたことを知られてしまったのではないかと焦ってしまうと思います。
もっとも、訴えられたという事実を否定することはできませんので、目の前の訴訟に真摯に対応をする必要があります。
では、具体的にはどのような手順で対応すればよいでしょうか。
(1)手順1:裁判の日にちを確認する
裁判所から届いた書類を確認すると、裁判所からの事務的事項を記載した文書(例:口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状)が封入されているはずです。
この文書には、第1回口頭弁論期日が記載された箇所があります。例えば、「期日 令和6年12月23日午後13時10分 場所 ○号法廷」などと記載されています。
この記載により、いつまでに第1回口頭弁論期日への対応をしなければならないかのタイムリミットが分かることとなります。
具体的には、①弁護士に依頼するのか、②依頼しないとして答弁書を提出するタイムリミットとなります。
(2)手順2:訴状記載の事実関係の確認
手順1で裁判が実施される日を確認した後は、訴状を確認してください。この訴状には、慰謝料の支払いを求めるこのできる理由が記載されています。
ここに記載されている事実関係をまずは確認をし、自身の認識と合っているかどうかについて確認をすることが大切です。
仮に、事実認識と食い違っている箇所があれば、事実関係を否認するなどして反論を行うことが考えられます。
事実関係が概ね正しいということであれば、慰謝料の支払いを拒絶することはできませんので、「いくらを払うか」という金額面でのやりとりをすることとなります。
なお、求められている金額にも注意が必要です。あまりに高額な慰謝料(例:特段の事情がないにもかかわらず500万円を超える請求など)の請求については、事実関係に争いがなくても、争っていく必要があります。
(3)手順3:弁護士への依頼の検討及び答弁書提出
訴状の確認が終了した後は、訴訟対応を自身で行うか、弁護士に依頼するかを決定する必要があります。
裁判は平日に実施されますので、ご自身で対応されるときには、この点を考慮する必要があるほか、裁判上の反論書類を作成する必要があるなど、一定の専門的知識や労力を必要とすることとなります。
そのため、基本的には弁護士への依頼をお勧めしております。
仮にご自身で対応されるときには、期日までに答弁書を作成・提出して、第1回口頭弁論期日を迎えることとなります。
その後は、裁判官の訴訟指揮に従って訴訟手続が進んでいくこととなります。
(4)弁護士に依頼するメリット
補足的に弁護士に依頼するメリットを列挙すると、次のようなものがあるといえます。なお、弁護士にも予定がありますので、訴状が届いたときにはできるだけ早期に相談をすることが必要です。
- 訴訟対応を自ら行わなくてもよく精神的負担が少ない
- 相場に沿った解決が実現可能
- 慰謝料額の減額が見込める
- 自宅に原告側や裁判所からの書類が届かないこととなる
- 和解金の分割交渉を含めた依頼ができる
4 訴状を無視した場合のデメリット
訴状が届いても何らの対応もしないで無視をすることは絶対に避けてください。
というのも、答弁書も提出せず、出廷もしないときには、原告の主張を認めたものとして扱われ、原告請求のとおりの判決が言い渡されてしまう可能性が高いためです。
この判決が確定すると、以後、争うことはできなくなり、正式に対応していれば支払うこととなった金額よりも多くの金額を支払うことにもなりかねません。
また、判決確定後は、預貯金や給与等の差押えにより、強制的に回収されてしまうというリスクもあります。
5 弁護士費用
主な費用は次のとおりです。
- 着手金 請求されている金額の8.8%
- 報酬金 減額した金額の17.6%