破産手続の相談を弁護士に行うと、同時廃止や管財事件という用語を聴くことがあります。この同時廃止とはどのような意味でしょうか。ここでは、「同時廃止」と「管財事件」について、その概略を解説します。
目次
1 同時廃止とは
自己破産における同時廃止とは、裁判所が破産手続を開始するのが相当であるという決定をしても、破産管財人を選任せずに直ちに破産手続を終了させる手続です
イメージとしては、破産管財人が選任されない手続となります。
この手続によって処理されるかどうかについては、裁判所によって一定の基準が設けられています。
自己破産の申立を裁判所に行った場合において、裁判所が、破産者に特段の問題がなく、破産管財人を選任するまでもないと判断したときに、同時廃止となります。
2 管財事件とは
破産の相談をした際に同時廃止とともによく聴く用語が管財事件です。
管財事件とは、文字通り、破産手続において、破産管財人が選任される手続となります。
自己破産の申立を裁判所に対して行った場合において、裁判所が、破産管財人を選任する必要があると判断したときに、管財事件となります。
3 同時廃止と管財事件との違い
いずれの場合であっても、最終的に裁判所が免責相当と判断したときには、負債の免責が認められる点では違いがありません。
もっとも、主に費用や期間について違いが生じます。
(1)費用面
個人が破産する場合の費用額については、こちらの記事にまとめていますが、管財事件では、管財手続費用(管財人に支払う費用)が必要となり、これが大きく異なる点となります。
この管財人に支払う費用は、「20万円~」となっておりますので、最低でも破産申立を行うにあたり、申立手数料等のほか、最低でも20万円の準備が必要となります。
お金に困っているから破産を選択するため、管財事件となるかどうかは非常に大きな違いであるといえます。
(2)期間面
期間についても、同時廃止よりも、管財事件となった方が破産手続が終了するまでの期間が長くなります。
これは、同時廃止では主に裁判所における書類審査を通じて免責の許否を判断するのに対し、管財事件では裁判所における書類審査だけではなく、管財人による調査や債権者集会が実施されることなどから、同時廃止よりも多くの手間や段階を踏む必要があることによります。
また、管財事件となる案件の方が複雑である場合が多いことから、申立てまでの準備に時間を必要とすることも期間がかかる理由となります。
4 管財事件となるかの基準とは
管財事件の方が費用も期間もかかることから、破産者としては、同時廃止の方が有り難い手続であると一般的にはいえます。
もっとも、破産者が希望を尊重して手続が決まるのではなく、裁判所における一定の基準により、同時廃止/管財事件が振り分けられています。
以下に例を挙げますが、最終的には裁判所の判断によって決められることに注意が必要です。
(1)同時廃止となる場合
大雑把に言ってしまうと、預貯金・現金や換価可能な資産を有しておらず、免責不許可事由もないような場合です。
(2)管財事件となる場合
管財事件では、破産管財人が裁判所により選任されます。
その主な仕事は、破産者の財産を換価し、債権者へ分配することや免責をしてもよいかどうかを調査することなどです。
そのため、大まかに言ってしまえば、こうした仕事を行う必要のある案件が管財事件となります。
例えば、次のような場合です。
- 法人破産の場合
- 社長が法人破産とともに自己破産する場合
- 個人事業主が自己破産する場合
- 免責不許可事由に該当する場合(ギャンブルや浪費が原因で破産するなど)
- 破産者が不動産を有している場合
- 破産者が一定額以上の換価可能な資産を有している場合
5 同時廃止になるのか管財事件になるのかが知りたい
以上に管財事件になる例を挙げていますが、実際の判断には微妙な場合も多いです。
そのため、同時廃止・管財事件のいずれとなるかについては、個人で明確に判断するのが難しい場合もあります。
管財事件となる場合には、その費用の積立てについて計画を策定する必要がありますので、弁護士への相談をお勧めしています。