生活保護を受給されている方の中には、生活保護受給前における体調の悪化、予期しない失職や収入の大幅減等を背景とする借入により、負債のある方がいます。
このような方に対してであっても、債権者から督促がくることがあります。
もっとも、生活保護費を返済原資とすることはできませんので、利息が増えるばかりであり、生活保護の受給を終えた後の生活に不安を覚える方もいらっしゃるのではないかと思われます。
ここでは、生活保護受給されている方であっても、自己破産ができるかどうかについて概略を解説致します。
目次
1 破産手続の利用を検討するきっかけ
生活保護受給中に破産手続の利用を検討するきっかけとしては、債権者から督促がきている、または自治体のケースワーカーから破産を勧められていることなどがあるのではないでしょうか。
生活保護費を返済原資とすることはできないため(生活保護費は、最低限の生活を送ることができるよう支給されているものであって、借金返済のために支給されているものではありません。)、債権者に事情を説明しても、返済を猶予してもらうことが考えられますが、利息が増える一方で、生活保護の受給を終えた後に不安が残ることとなります。
負債額にもよりますが、こうした不安を取り除くため、破産を選択される方がいます。
2 よくある質問
生活保護を受給されている方からの問い合わせでよくあるものとして、次のようなものがあります。
(1)破産すると生活保護が停止になるのではないか
破産したとしても、これだけを理由に、生活保護が停止になることはありません。
(2)100万円未満の負債であっても破産ができるのか
多額の負債ではないが破産は可能か?というものです。例えば、100万円未満の負債しかないが、破産可能か?というものです。
破産手続の開始原因は債務者が「支払不能」にあることですが、「支払不能」とは「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」とされています(破産法2条11号)。
例えば、生活保護のみで生活をされている方の場合、返済に充てることのできる収入がないことから、通常「支払不能」にあるものとして、破産可能な場合が多いといえます(ただし、別途、免責不許可事由への該当性や非免責債権への該当性の検討が必要となります。)。
3 破産を行うための費用負担は?
弁護士に破産手続を相談・依頼する場合、当然無料ではありません。
そこで、生活保護を受給されている方にとって気になるのが、弁護士費用や各種費用を用意できるのか、ということではないでしょうか。
結論として、法テラスを利用することで、この点に関する負担は軽減されます。
4 法テラスとは
法テラスとは、「国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所」(公式H Pより)と自称されていますが、様々な事業を行っています。
その一つが、民事法律扶助です。
具体的には、一定の資力要件等を満たした方を対象として、法テラスが弁護士費用等を弁護士に支払い、依頼者が法テラスにその費用等を分割払い等により支払っていくというもので、弁護士費用等も法テラスが決定することとなります。
生活保護受給者であれば、一般に資力要件等を充足しますので、法テラスを利用することで、費用面に不安なく、破産手続を選択できることとなります。
事件終了時に生活保護を受給中であれば、法テラスに支払う費用の免除申請も可能となっています。
なお、法テラスに関する詳細は、直接法テラスにお問合せください。
5 まとめ
生活保護を受給されている場合において負債があるときには、破産手続を利用することで負債を解消し、生活保護の受給を終えた後の生活に備えることが有用であるといえます。
仮に、現時点で生活保護の受給を終える目処が立っていない場合であっても、負債を解消することで、債権者からの督促がなくなるなどのメリットがあります。
弁護士に依頼することなく破産手続を完了することは難しいと思われますので、まずは弁護士に相談されることを勧めています。