マッチングアプリを通じて知り合った男性が、「独身であったため結婚を前提に真剣交際をしていたものの、実は交際相手方既婚者であることが判明した」ことなどから慰謝料請求を行いたいという相談があります。
反対に、慰謝料請求をされているという相談もあります。
既婚者であることを隠して性的関係を伴う交際を行っていたような場合には、貞操権の侵害が問題となります。
ここでは、この貞操権侵害を理由とする慰謝料請求について、その概略を解説します。
目次
【主なチェックポイント】
✓貞操権とは、一般的に、誰と性的な関係を持つかどうかを自分の意思で決定する権利をいい、これが侵害されると慰謝料が生じます。
✓慰謝料請求に有用な証拠としては、写真、LINE及びメールなどがあります。
1. 貞操権とは
貞操権とは、一般的に、誰と性的な関係を持つかどうかを自分の意思で決定する権利を指します(人格権などということもあります。)。
この点について、「女性の男性に対する貞操等の侵害を理由とする慰藉料請求は許容されるべき」と言及した裁判例があります(最判二昭和44年9月26日)。
2. 貞操権の侵害が問題となる典型例
それでは、どのような場合に貞操権の侵害が問題となるでしょうか。
典型的には、独身男性と結婚を前提に性的関係を有する真剣交際を行っていたところ、偶然既婚者であることが判明した場合が挙げられます。
出会いのきっかけは、マッチングアプリ、婚活パーティーなどが多い印象です。
結婚を前提とした真剣交際である以上、男性が既婚者であれば性的な関係を持つことはなかったはずです。
その意味で、誰と性的な関係を持つかどうかを自分の意思で決定する権利が侵害されているといえます。
結婚相談所で知り合った場合であっても、このようなトラブルはあり得ますが、結婚相談所では通常「独身証明書」「戸籍」の提出により独身であることを確認しておりますので、トラブルとなるのは稀という印象です。
なお、既婚者であることを知った上で性的な関係を持っていたときには、自分の意思で関係をもつことを選択していますので、貞操権侵害には該当しません。
3. 交際相手が既婚者であることを知った場合の注意点
独身であると信じていた真剣交際の相手が既婚者であることを知った場合、その責任を追及したいと考えるのが通常ですが、相手方を許して交際を継続するケースもあります。
こうした場合、次のようなデメリットが指摘できます。
① 既婚者であることを知ったにもかかわらず性的関係を継続していることから、誰と性的な関係を持つかどうかを自分の意思で決定する権利(貞操権)が侵害されていないなどという評価になる可能性があります。
こうした評価となったときには、慰謝料請求は難しいものとなります。
② 既婚者であることを容認しつつ関係を継続する以上、交際相手の配偶者(妻)から不貞慰謝料請求を受ける可能性があります。
こうしたときには、多額の慰謝料を支払うこととなるおそれがあります。
4. 慰謝料算定の考慮要素
貞操権侵害があった場合に認められる慰謝料金額は、法律上具体的な金額が明確に定められているものではありません。
そのため、様々な要素が考慮されて、具体的な金額が定まることとなります。
考慮要素としては、例えば、次のようなものが挙げられます。
- 交際期間(既婚者であることが判明するまで)
- 女性の年齢(結婚・出産の適齢期を無為に過ごしてしまったか)
- 真剣交際の程度(結婚前提の出会いであるかなど)
- 女性側の負担(関係を持った頻度、中絶の有無や発覚したことによる心理的影響)
- 相手方男性の対応(嘘の内容や発覚後の謝罪など)
この慰謝料の具体的金額は、最終的には裁判を通じて確定するものですが、概ねの相場がありますので、詳細はお問い合わせください。
5. 慰謝料請求に有用な証拠とは
慰謝料請求に有用な証拠としては、性的関係の存在を直接基礎づけるような写真、LINE及びメールでのやりとりなどが挙げられます。
このほか、相手方から既婚であるにもかかわらず性的関係を持った旨の念書を取得することも考えられます。
そのほか、出会いのきっかけが、マッチングアプリなどであるときには、サービスを提供している会社の利用規約(既婚者は利用禁止などという規約があるのが通常です。)など、独身であることが利用の前提となっている情報が挙げられます。
また、プロフィール情報のスクリーンショット(独身と記載されているか。)など、独身であることが端的に記載されている情報も考えられます。
どのような証拠があればよいのかはケースバイケースですので、お手持ちの証拠で十分かどうか不安な方は直接弁護士に相談されることをお勧めします。
6. 慰謝料請求を行いたい場合(裁判を起こしたい場合を含む)
既婚者であることが発覚したときには、何もアクションを起こさずに連絡をとらないようにすることも選択肢の一つです。
そうではなく、慰謝料請求を行うこととした場合には、いくらを、どのような方法で、請求するかを決める必要があります。
このうち、「どのような方法で」という点については、裁判外で請求する(例:内容証明郵便による請求)ほか、裁判で慰謝料の支払を求めていく方法もあります。
裁判外での請求の結果、相手方との間で和解の条件が整ったときには、和解書(示談書)を作成する必要があります。
口約束では、後々言った/言わないの争いとなりますので、公正証書を作成することを含め、書面化をする必要があります。
なお、裁判となっているときには、和解調書が作成されます。
7. 慰謝料請求をされた場合(裁判を起こされた場合を含む)
既婚男性が裁判外で慰謝料請求をされた場合(例:弁護士から内容証明郵便がご自宅に届く、弁護士からの架電。)と裁判で請求された場合(この場合には、特別送達により裁判所から茶封筒で訴状等の書類が届きます。)が考えられます。
裁判外での請求について対応を行わないときには、裁判を起こされる可能性がありますので、請求を無視すること得策ではないといえます。
仮に請求内容が事実である場合には、男性側に非がありますので、解決金等の和解条件について真摯に話し合いを行うことで、和解することが必要です。
裁判を起こされた場合には、裁判所の訴訟指揮の下、答弁書・準備書面といった書面でのやりとりを行っていくこととなります。
いずれの場合も、自身に非があることから直接やりとりを行うのが心情的に難しいといった面や法的知識に基づいた対応が必要といった面がありますので、弁護士の介入が有用であるといえます。
また、和解の条件が整ったときには、和解書(示談書)を作成する必要がある点は同様です。
8. 弁護士費用
御依頼事項 | 着手金 | 報酬金 |
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慰謝料請求(請求側) | 請求額の8% | 取得することとなった金額の16% |
慰謝料請求(被請求側) | 請求額の8% | 減額できた金額の16% |
注2 ご事情により上記金額とは異なる費用となることがあります。