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相続分の放棄(相続放棄との違いを含む)、相続分の譲渡の解説:遺産をめぐるトラブルへの対応

2024-12-13
遺言・相続

相続手続において、共同相続人の法定相続分を変動させるものとして、「相続分の放棄」「相続分の譲渡」というものがあります。

これらは、どのようなものでしょうか。また、「相続分の放棄」と似た用語として「相続放棄」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、これらについて、その概略を解説します。

目次

1 相続分の放棄

(1)相続分の放棄とは

相続分の放棄とは、相続人が自らの相続分(相続分とは、相続財産全体に対する各相続人の取り分です。)を放棄するものです。

(2)相続分の放棄の効力

相続分の放棄により、次のような効力が生じます。

  • 相続分の放棄をした相続人は、被相続人の遺産を取得しないこととなります。
  • 相続分の放棄により、他の相続人の相続分が変化します。
  • ただし、相続分の放棄によっても、相続人という地位は失わず、相続債務の負担はそのままです

(3)相続分の放棄が想定されるケース

相続分の放棄が想定されるケースとしては、例えば次のようなものが想定されます。

  • 相続人が多数に及んでおり、自らの取得できる遺産が少ないとき
  • トラブルに巻き込まれたくないとき

なお、相続分の譲渡では相続債務の負担は免れないことから、相続放棄の期間制限前であれば相続放棄をすることも選択肢となります。

(4)相続分の放棄のやり方

相続分の放棄は、相続開始後であれば、遺産分割が成立するまでの間であればいつでもすることができます。

方法としては、その意思を明らかにするために、相続分の放棄の意思表示を明らかにする書面に、「本人の自署と実印での押印のほか、印鑑登録証明書の交付」が求められるのが通常です。

相続放棄とは異なり、家庭裁判所で行わなければならないものではありません。

(5)相続放棄との違い

相続分の放棄と相続放棄(相続放棄の説明はこちら)との主な違いは次のとおりです。とくに注意したいのが、相続債務がある場合、相続放棄ではこれを負担しないこととなるのに対し、相続分の放棄では負担を免れないことです。

その他にも、後順位の相続人への影響などがあります。

  相続分の放棄相続放棄
やり方家庭裁判所での手続が必須ではない家庭裁判所での手続が必要
期間制限なし3か月の期間制限
相続債務の負担負担有負担なし

2 相続分の譲渡

(1)相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、相続人が自らの相続分(相続分とは、相続財産全体に対する各相続人の取り分です。)を譲渡するものです。

相続分の譲渡の相手は、共同相続人に限らず、第三者であっても可能です。

(2)相続分の譲渡の効力

相続分の譲渡により、譲渡人の相続分を譲受人が承継することとなります。

(3)相続分の譲渡が想定されるケース

相続分の譲渡が想定されるケースとしては、例えば次のようなものが想定されます。

  • 特定の相続人に自らの相続分を渡したいとき
  • 遺産分割の成立を待つまでもなく対価を取得したいとき
  • トラブルから早期に免れたいとき

なお、相続分の譲渡をしても、相続人の地位は失わず相続債務の負担は免れないことから、相続債務の方が多いときには、相続放棄の期間制限前であれば相続放棄をすることも選択肢となります。また、譲渡にあたっては税負担にも留意した方がよいでしょう。

(4)相続分の譲渡のやり方

相続分の譲渡は、相続開始後であれば、遺産分割が成立するまでの間であればいつでもすることができます。

方法としては、その意思を明らかにするために、相続分の譲渡の意思表示を明らかにする書面に、「本人の自署と実印での押印のほか、印鑑登録証明書の交付」が求められるのが通常です。

家庭裁判所で行わなければならないものではありません。

3 遺産分割調停中に相続分の放棄や相続分の譲渡を行った場合

家庭裁判所での遺産分割調停中に、相続分の放棄や譲渡を行った場合、これらを行った者の扱いはどうなるでしょうか。

家庭裁判所は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を職権で手続から排除できるものとされています(家事事件手続法258条1項、43条1項)。

そのため、これらの者について、手続から排除する旨の決定が下されて、以後、家庭裁判所での調停から除外されることとなります。

4 まとめ

相続分の放棄や譲渡は、これに伴う帰結など複雑な要素を含んでいます。そのため、これらの方法を選択する前に、一度弁護士への相談をお勧めしています。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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