大澤法律事務所

弁護士紹介

業務内容

アクセス

記事一覧

042-519-3748

営業時間 平日10:00 - 20:00

お問合せ

メニュー

相続放棄の方法とは

2024-03-25
遺言・相続

例えば父又は母が死亡したときには相続が開始しますが(民法882条)、相続人である子どもの選択肢としては、①単純承認、②限定承認及び③相続放棄があります。

ここでは、これらのうち③相続放棄について解説を致します。

目次

【本記事のポイント】

✓相続が開始した場合における相続人の選択肢としては、①単純承認、②限定承認及び③相続放棄の3つがあります。

✓相続放棄とは、プラス/マイナスを問わず、すべての権利義務を承継しないことです。

✓相続放棄は、原則として3か月という期間内に、家庭裁判所で行う必要があります。

1.相続が開始した場合における相続人の選択肢

相続が開始した場合おける相続人の選択肢としては、次のものが考えられます(例えば父又は母が死亡した場合おける子どもの選択肢)。

選択肢概要の説明
単純承認プラス/マイナスを問わず、すべての権利義務を承継することです。
限定承認相続人が、相続によって得た財産の範囲内でのみ被相続人の債務および遺贈を弁済するという留保付き承認です。
相続放棄プラス/マイナスを問わず、すべての権利義務を承継しないことです。

本記事では、③相続放棄について説明を致します。

2.相続放棄とは

相続放棄とは、プラス/マイナスを問わず、すべての権利義務を承継しないことです(民法939条)。

これにより初めから相続人とならなかったことになります。

そのため、例えば、相続放棄を行ったときには、相続放棄を行った者の子どもには代襲相続(代襲相続とは、相続人が相続開始前に死亡している場合等において、相続人の直系卑属がその相続人が得るはずの相続分を相続することです。)が生じないこととなります。

なお、相続放棄は相続開始後に行うため、被相続人の生前に予め相続放棄を行うことはできません。

3.相続放棄が想定される場合

それでは、相続放棄が想定される場合としては、どのような場面があるでしょうか。

例えば、資産が乏しい一方で多額の負債のある父が死亡した場合において、子ども一人のみが相続人であるときが考えられます。

このような場合に、①単純承認により子どもが多額の負債も含めて引き継いだのでは自身の生活が立ち行かなくなってしまうことが容易に想定できます。

そのため、多額の負債を引き継がないために、③相続放棄が現実的な選択肢となります。

4.相続放棄を行う上での注意点:法定単純承認

相続放棄を行う場合(又は行った場合)には、法定単純承認という制度に抵触しないよう注意する必要があります。

これは、明示的に①単純承認を行う旨の意思表示を行った場合でなくても、民法921条に定める一定の事由に該当するときには、①単純承認をしたものとみなされるという制度です。

この一定の事由とは、ⅰ相続財産の処分(同条1号)、ⅱ熟慮期間の徒過(同条2号)及びⅲ限定承認・相続放棄後の背信的行為(同条3号)です。

ⅰ.相続財産の処分(民法921条1号)

相続財産の全部または一部を処分したときには、③単純承認を行ったものとみなされます。

その趣旨は、「かかる行為は相続人が単純承認をしない限りしてはならないところであるから、これにより黙示の単純承認があるものと推認し得るのみならず、第三者から見ても単純承認があったと信ずるのが当然であると認められる」ことにあるとされます(最判昭和42年4月27日民集21巻3号741頁)。

ⅱ.熟慮期間の徒過(民法921条2号)

前記1のように、相続が開始した場合における相続人の選択肢としては、①単純承認、②限定承認及び③相続放棄が挙げられますが、原則として、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」(民法915条)と定められており、この期間内に、②限定承認又は③相続放棄をしなかったときには、その相続人は①単純承認をしたものとみなされます(民法921条)。

なお、この期間を「熟慮期間」と言いますが、一定の場合には、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立てをすることで、熟慮期間を延ばすことも可能です。

ⅲ.限定承認・相続放棄後の背信的行為(民法921条3号)

限定承認又は相続放棄後に「相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき」は、単純承認したものとみなされます。

これらの行動をとった相続人には相続放棄等の保護を与えるのは相当ではないという趣旨です。

5.相続放棄のやり方

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄を行う旨の申述書を提出することとなります(民法915条1項)。

これは各相続人がそれぞれ単独で行うことができます。

例えば、国立市に居住していた父が死亡した場合において、相続人である子どもが相続放棄を行う場合には、所定の書類を揃えた上で、国立市を管轄する東京家庭裁判所立川支部宛てに、相続放棄の申述書を提出することとなります。

被相続人の最後の住所地が立川市、国分寺市、日野市、昭島市、三鷹市、武蔵野市などの場合も同様です。

このように相続放棄の申述を行うと、裁判所による審理を経て、「相続放棄申述受理通知書」という書類が発行されるのが通常です。

この「相続放棄申述受理通知書」を受け取ることで相続放棄の手続は完了となります。

なお、相続放棄を行った者は、その放棄により相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで自己の財産におけるのと同一の注意をもって財産の管理を継続する義務を負うものとされています(民法940条1項)。

6.弁護士に相続放棄を依頼するメリット

相続放棄を選択する場合には、一定の期間制限があることから、できる限り早めのスタートが望まれるうえ、戸籍等の必要な書類の収集に時間を費やすことが想定されます。

また、裁判所に相続放棄の申述を行う必要もあります。

そのため、弁護士に相続放棄を依頼することで、確実に相続放棄を行うことができるというメリットがあります。

7.弁護士費用

相続放棄に必要となる主な弁護士費用は次のとおりです(別途実費が生じます)。

・5万円(税抜)

注1 相続放棄の手続を急ぐ事情があるとき(例:3か月の期間が迫っている)などには最大で10万円まで上記金額が増加することがあります。

8.参考

〇文献

・「Q&A限定承認・相続放棄の実務と書式」(相続実務研究会・民事法研究会、平成30年10月)

執筆者

大澤 一雄 弁護士の顔写真

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

お問合せ

大澤法律事務所

〒190-0012 東京都立川市曙町1丁目12番17号 原島ビル4階

042-519-3748

営業時間:平日10:00 - 20:00


関連カテゴリ

関連記事