養子縁組の無効確認とは、形式上は有効な養子縁組届が役所に提出されているものの、当事者双方または一方に縁組意思がない場合において、その養子縁組の無効確認を求めるものです。
例えば、養親となる者と面識がないものの、仲介者から不法・不当な理由によって養子となることを求められ、金銭等の提供と引き換えに養子縁組届を提出したような場合や何らかの事情によって勝手に養子縁組届が提出された場合などが想定されます。
養親又は養子の真実の意思に沿わない養子縁組がなされている場合であっても、形式上は有効な養子縁組であることから、相続が発生すれば養親又は養子に財産が相続されてしまう可能性がありますし、そもそも縁組意思のない人との間に身分関係が生じているのが心理的に負担ということなども考えられます。
こうした理由から養子縁組の無効確認を行いたいというニーズがあります。
それでは、養子縁組の無効確認はどのように求めることになるのでしょうか。
ここでは、「養子縁組の無効確認」について解説します。
目次
1 養子縁組の無効確認原因とは
養子縁組が無効と判断されるための要件は、「当事者間に養子縁組をする意思がないこと」、となります。
これは諸事情を考慮して判断されますが、例えば、金銭等の提供と引き換えに、全く会ったこともない方と養子縁組を行ったような場合がこれに該当するものと考えられます。
2 養子縁組の無効確認を求める先と相手方の住所の特定
無効確認原因がある場合において、養子縁組の無効確認を求める先は「家庭裁判所」となります。
具体的には、家庭裁判所に対して、養子縁組の無効確認を求める裁判を起こすこととなりますが、裁判を起こす際には相手方の住所を特定する必要があります。
もっとも、縁組意思がないことからも分かるように、相手方とは没交渉であり、その住所を知らないことも多いです。
相手方の住所を知らないときには、弁護士が職務上請求を利用することで、戸籍から戸籍の附票または住民票を取得することで、住所を特定することとなります。
そのため、養親または養子が全く知らない人であっても、弁護士に依頼することで裁判を起こすことが可能となります。
3 養子縁組の無効確認調停:STEP①
養子縁組の無効確認を求める裁判の種類としては、まず家庭裁判所に対して、養子縁組の無効確認を求める旨の家事調停を申し立てることとなります。
調停とは話し合いにより課題を解決するものですが、相手方が話し合いに応じ、①養子縁組が無効であることについて当事者間で合意し、かつ、②家庭裁判所において、その合意を妥当と認める場合には、「合意に相当する審判」がなされます。
これは、養子縁組の無効確認事件については、本来当事者間の協議で任意に処分することが許されているものではなく、判決手続によるべきことから、家事調停手続に付されたときには、特別の手続によるものとされているためです。
もっとも、相手方が調停に出席をしないなど合意ができないときには、調停は不成立となります。
4 養子縁組無効確認の訴え:STEP②
養子縁組の無効確認調停が不成立となったときには、養子縁組の無効確認を求める旨の確認の訴えを家庭裁判所に対して提訴します。いわゆる人事訴訟となります。
人事訴訟では、相手方の合意がなくても、裁判所が無効原因ありと認定すれば、縁組の無効を認める判決を下すこととなります。
ここで相手方の合意を問わないのであればまず人事訴訟を提起すればよいのではないかという疑問も生じますが、調停前置主義がとられていることから、基本的には上記3の調停を経ることが必要となります。
5 相手が死亡している場合であっても無効確認を求めることは可能
現実には、養子縁組の相手方が死亡しているという場合もあります。
こうした場合であっても、検察官を被告として、家庭裁判所に対して、無効確認訴訟を提起することができます。
なお、相手方が死亡していれば話し合いを行うことはできないため、家事調停を経ないこととなります。
6 戸籍の訂正
家庭裁判所から合意に相当する審判や無効確認判決を取得してこれらが確定した場合であっても、当然に戸籍が訂正されるものではありません。
これらの裁判が確定した後、該当の役所に対して、所定の期間内に戸籍訂正の申請をする必要があります。
7 弁護士に依頼するメリット
養子縁組の無効を求めるためには、家庭裁判所における裁判手続を経る必要があることから、一定程度の専門的知識が必要となります。また、相手方の住所がわからないため、住所の特定から行わなければならないといった場合でも、弁護士であれば職務上請求を利用することで特定することができます。
これらのことから、養子縁組の無効を求めたいといった場合には、まずは弁護士へのご相談をお勧めしています。