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相続の場面における使途不明金とは:使途不明金の取扱方法や遺産分割調停など

2024-06-28
遺言・相続

遺産分割を行う場合、被相続人(例:両親)名義の預貯金からその生活に不相応な金額が引き出されており、その使い途が分からないといったことがあります。

このような「使途不明金」について解説します。

目次

1. 使途不明金とは

使途不明金とは、文字通り、どのような目的に使われたかが分からない金銭をいいます。

この使途不明金は様々な場面で登場しますが、相続に関する場面でも登場します。

例えば、死亡した親名義の預貯金から生活としては不自然なほど多額の金銭が引き出されていたような場合です。

また、親の死亡後に引き出されていたような場合なども挙げられます。

このような、使途不明金は、相続の場面、具体的には遺産分割においては、どのように考えればよいのでしょうか。

2. 使途不明金の取扱い方法

使途不明金については、預貯金の引出しを行ったと思われる相続人に対して、その経緯や使途の説明を求めることから始まります。

その説明の結果として、例えば、次のようなものが挙げられます。

(1)被相続人のために使用したなど、使途を相続人全員が妥当なものと認めた場合

この場合には、使途が明らかとなり、使途についても相続人の同意がとれていることから、特段の問題は生じないこととなります。

例えば、被相続人の病院代に使用したという説明があり、全員が妥当なものと認めた場合などです。

(2)相続人の一人が自身のために使ってしまったことを認めている場合

被相続人の預貯金を引き出して自身のために使った旨を相続人の一人が認めている場合には、当該使用金額を遺産として合意をしたうえで、遺産分割においてその者の取得分として処理することが考えられます。

最終的には、法定相続分に従った配分となります。

(3)使途不明金を相続人の一人が保管していることが判明した場合

被相続人の預貯金を引き出したうえで、相続人のうちの一人が現金で保管している場合には、遺産として合意をしたうえで、遺産分割の対象に組み入れることとなります。

(4)金銭を相続人が使ってしまい、その額や使い途に争いがある場合

相続人の一人が被相続人名義の預貯金を引き出して使ってしまい、その額や使途に争いがあるような場合には、不当利得返還請求又は損害賠償請求など地方裁判所における民事訴訟で解決すべき事項となり、家庭裁判所における遺産分割手続では解決することができないこととなります。

(5)小括

使途等には様々なものがあるため、以上に挙げたものは一例にすぎませんが、ごく簡単にまとめると、使途不明金について遺産分割の対象とすることが合意されれば遺産分割手続において取り扱われる事柄となり、この合意ができないときには民事訴訟手続において取り扱われる事柄となります。

3. 使途不明金の争い方

遺産分割の場面における使途不明金については、遺産分割調停を通じて、相手方に使途を明らかにするよう求め、その説明に応じて、適宜対応をすることが考えられます。

家庭裁判所における遺産分割調停において合意が得られないときには、使途不明金は家庭裁判所で取り扱うことができず、地方裁判所において取り扱う事項となります。

そのため、別の裁判所で訴訟という形で争うことが必要となりますので、紛争の一回的解決を図ることができないという側面が出てきます。

このような面にも配慮しつつ、使途不明金を追及していくこととなります。

4. 特別受益との関係

それでは、使途不明金が特別受益となることはあるでしょうか。

特別受益とは、相続人の中に、被相続人から多額の生前贈与などを受けた人がいる場合における当該相続人が受けた利益のことをいいます(民法903条1項)。

例えば、使途不明金を受け取った相続人からの説明が、被相続人である父から「〇円を引き出して、生活のために使ってよい」などとして被相続人の承諾の下、金銭を受領したときには、生前贈与と捉えることが可能です。

このような場合には、使途不明金の使途が生前贈与であることが明らかになったものとして、特別受益の考え方に基づき取り扱うことが考えられます。

もっとも、被相続人が重度の認知症にかかっているような場合には、生前贈与を行う意思能力が欠けていると考えられることから、生前贈与には該当しないこととなります。

5. 使途不明金の証拠

このような使途不明金の証拠としては、何があるでしょうか。

典型的には、被相続人名義の通帳の写しや取引明細となります。

取引明細については、金融機関によって呼称が異なりますが、金融機関に発行を依頼することで取得することが可能です。

6. まとめ

使途不明金については、その使途等によってどの裁判所で争うべきかが異なるなど、予測が付きにくいものであるといえます。

そのため、弁護士への相談をお勧めしています。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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