養子縁組を行うと、養親は養子に対して扶養義務を負い、養親と養子間には相続が発生するなどの法律上の効果が生じます。
何らかの事情によって養子縁組を解消(離縁)したいという場合、どのようにして離縁をすることができるでしょうか。
目次
【主なチェックポイント】
✓普通養子縁組か特別養子縁組かによって手続が異なる
✓基本的には離縁訴訟を行う前に、離縁調停を行う必要がある
✓離縁訴訟で離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離縁原因があることが必要
1. 養子縁組とは
養子縁組とは、法律上の親子関係がない人との間に法律上の親子関係を作りだす制度です。
親となる人を養親、子となる人を養子といいます。
養子縁組には、①養子縁組後も実親子関係が存続する「普通養子縁組」と②養子縁組によって実親子関係が終了する「特別養子縁組」があります。
このような養子縁組により、例えば、養子は、養親を被相続人とする相続において他の法定相続人とともに遺産を相続する権利を有することとなります。
養子縁組によって作り出された法律上の親子関係を解消したいと考えた場合、どのようにすればその関係を解消することができるのでしょうか。
普通養子縁組か特別養子縁組かによって、選択することのできる解消方法が異なりますので、以下では、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」とに分けて解説をします。
2. 普通養子縁組の場合の養子縁組の解消方法
普通養子縁組の解消方法には、ⅰ協議離縁(民法811条1項)、ⅱ離縁調停、ⅲ審判離縁及びⅳ離縁訴訟などがあります。
養子縁組の解消方法 | ||
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ⅰ | 協議離縁 | 養親と養子との話し合いにより離縁する方法です(民法811条1項)。 |
ⅱ | 離縁調停 | 養親と養子と間での任意の話し合いが難しい場合などに、家庭裁判所において、家事調停委員を介して、離縁に関する話し合いを進めていく方法です。あくまで話し合いによる離縁が前提であり、話し合いがまとまらないときには、調停は不成立となります。 |
ⅲ | 離縁審判 | 離縁調停が成立しない場合において家庭裁判所が相当と認めるときに行う調停に代わる審判です(家事事件手続法284条)。 |
ⅳ | 離縁訴訟 | 離縁調停を行ったものの、離縁に関する話し合いが決裂した場合に、家庭裁判所に対して、離縁を求める旨の請求を行う方法です。離縁訴訟では、最終的には裁判官による離縁を認める/認めないといった判断が下されることとなります。なお、調停前置主義が採用されていることから、基本的にはまずは離縁調停を行うこととなります(調停前置主義)。 |
(1)協議離縁とは
協議離縁とは、養親と養子との話し合いにより離縁する方法であり(民法811条1項)、市区町村に離縁届が受理されたときに離縁が成立するものとされています(民法812条、739条)。
具体的には、養親と養子との間で親子関係の解消について話し合いを行い、その結果離縁することについて合意が得られたときが協議離縁に該当します。
(2)離縁調停とは
このように養親・養子間での話し合いにより離縁についての合意が成立すればよいのですが、当事者間でのやりとりでは話し合いがまとまらない場合もあります。
このような場合には、家庭裁判所での調停手続(家庭裁判所における話し合いの手続です。)を利用し、調停において離縁についての合意を目指すことが考えられます。
これが「離縁調停」と呼ばれているものです。
あくまで話し合いの手続であることから、合意が成立しないときには、調停は不成立として終了となります。
(3)離縁審判とは
離縁審判とは、離縁調停が成立しない場合において家庭裁判所が相当と認めるときに行う調停に代わる審判です(家事事件手続法284条)。
もっとも、経験上、調停が不成立となるときにかかる審判がなされることは多くはなく、後述の離縁訴訟を起こす必要がある例が通常ではないかと思われます。
(4)離縁訴訟とは
離縁訴訟とは、離縁調停を行ったものの、離縁に関する話し合いが決裂した場合に、家庭裁判所に対して、離縁を求める旨の請求を行う方法であり、人事訴訟手続に該当します。
離縁訴訟では、最終的には裁判官による離縁を認める/認めないといった判断が下されることとなります。
裁判官による判断は、法定の離縁原因があるかどうかによって行われることとなります。
なお、離縁調停を経ることなく、当初から離縁訴訟を起こしたときには、離縁調停を行うことが適当でない場合以外は調停に付されることとなりますので、基本的にはまずは離縁調停を行うこととなります(調停前置主義)。
(5)離縁訴訟における離縁原因
離縁訴訟は、裁判官が離縁を認めてよいかどうかを判断する手続ですが、養親又は養子のいずれからも離縁請求を行うことができます。
この離縁を認めてよいか(離縁原因)は民法に定めがあります。
離縁原因は次のとおりです。
① 「他の一方から悪意で遺棄されたとき」(民法814条1項1号)
② 「他の一方の生死が三年以上明らかでないとき」(同項2号)
③ 「その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき」(同項3号)
もっとも、これらの原因があっても、家庭裁判所は、一切の事情を考慮して養子縁組を継続すべきと判断するときは、離縁の請求を棄却することができるとされています(民法814条2項、770条2項)。
3. 特別養子縁組の場合の養子縁組の解消方法
特別養子縁組における養子縁組を解消したい場合には、普通養子縁組におけるⅰ協議離縁やⅱ離縁調停などは利用することができません。
特別養子縁組については、養子の利益のために厳格な要件での家庭裁判所の審判により離縁することができるものとされています。
具体的には、養子、実父母又は検察官の請求により、家庭裁判所が審判によって離縁させることができます。
注意点として、養親からの離縁請求は認められていないほか、普通養親縁組と比べると、養子の利益のために厳格な要件の下でのみ認められていることが挙げられます。
特別養親縁組の離縁に関する規定は次のとおりです(民法)。
(特別養子縁組の離縁)
817条の10次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
4. 離縁請求における弁護士利用の大切さ
養親・養子間の話し合いで解決することのできる協議離縁によることができる場合は別として、そのほかの方法による場合には、裁判所を通じたやりとりや、(とくに離縁訴訟について)そもそも離縁の要件が認められることについて裁判所主張することが求められるなど、ご本人様では的確な手続遂行ができないことが想定できます。
とくに離縁の争いがあるときには、感情的な対立が激しい場合も多く、この意味でもご本人様での対応では困難な面があります。
こうしたことから、離縁請求については、弁護士へのご相談をお勧めしております。