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遺言書の作成方法

2024-05-27
遺言・相続

適切な遺言書がある場合、相続開始後に遺産の分け方について相続人間で協議をする必要がなくなることから、遺言書を作成することで、相続人間における将来の相続紛争を防止する効果が期待できます。

もっとも、遺言書の作成方法を調べると、自筆証書遺言や公正証書遺言など色々な種類があることが分かります。

ここでは、遺言書の種類や作成方法、どのような種類の遺言書を作成すればよいのかなどについて解説します。

目次

【主なチェックポイント】

✓遺言書の種類には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言及び③秘密証書遺言がある

✓そのうち、②公正証書遺言の作成がお勧め

✓公正証書遺言作成には多くの事務的負担がありますが、弁護士に依頼することで内容の充実した遺言を作成可能

✓遺言書の作成にあたっては、死後の遺言内容の実現までを見据えた対応が必要

1. 遺言書の種類

遺言書とは、自身が死亡した後に、自分の財産を誰にどのように分けるかなどをあらかじめ指定しておくものです。

一言に遺言書といっても、様々な遺言があります。

具体的には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言及び③秘密証書遺言があります。

このうち、①自筆証書遺言とは、遺言を行う者が自ら遺言書を手書きで作成する遺言書です。

作成について専門家のアドバイスを受けなければ、費用もかからず、もっとも手軽な方法であるといえます。

もっとも、有効な遺言と認められるためには、日付けや氏名の自署が必要など法律で定められた厳格な要件を満たす必要があり、これを満たさないときには無効となることや死後家庭裁判所による検認手続が必要となります。

②公正証書遺言とは、公証役場という公的機関において、公証人の関与のもと作成をする遺言書です。

公証役場において作成をするため、遺言者自ら手書きで作成をする必要はありませんし、家庭裁判所による検認手続は不要です。

遺言書原本が公証役場で保管されるなど安全性の高い方法であるといえますが、公証役場に対する手数料が発生します。

最後に、③秘密証書遺言とは、あらかじめ自分で作成した遺言書に封をし、封をした状態のままで公証役場に提出して、遺言書の存在を証明してもらう遺言書ですが、実際の利用例は多くないものと考えられます。

【遺言の種類のまとめ】

遺言の方式概要留意点
自筆証書遺言遺言者が手書きで作成する遺言書・所定の要件を満たさないと遺言が無効となります。
・死後、家庭裁判所による検認手続が必要となります。
公正証書遺言公証役場という公的機関において、公証人の関与のもと作成をする遺言書・公証役場に対する手数料が発生します。
秘密証書遺言あらかじめ自分で作成した遺言書に封をし、封をした状態のままで公証役場に提出して、遺言書の存在を証明してもらう遺言書・公証役場に対する手数料が発生します。

2. 各遺言書のメリット/デメリット

遺言書のうち、③秘密証書遺言は利用例が多くないと考えられることから、①自筆証書遺言と②公正証書遺言のメリット/デメリットについて説明をします。

(1)①自筆証書遺言のメリット/デメリット

自筆証書遺言は、文字通りみずから手書きで作成するものとなります。

公正証書と比較した場合のメリットとしては、公証役場に支払う手数料がかからないことから、手軽に作成することができるといえます。

もっとも、この遺言書が法律上有効と認められるためには厳格な形式的な要件を守らなければ遺言が無効となってしまうという大きなデメリットがあります。

作成した遺言がこうした要件を満たしているかどうかを、遺言書を作成した人において自ら判断するのは非常に困難であるといえます。

そのほか、死後、遺言書が発見されない可能性があること、紛失(注1)や第三者による改ざん・破棄のおそれがあること、死後に家庭裁判所での検認手続(遺言書を発見した相続人等の申立てにより、相続人に遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、形状、日付、署名など遺言書の内容を明らかにして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続で、家庭裁判所において行われます。)が必要となるなどのデメリットがあります。

注1 自筆証書遺言であっても、法務局に保管申請することで、紛失等のおそれに対応することが可能です。

また、法務局による保管制度を利用したときには検認手続は不要となります。

(2)②公正証書遺言のメリット/デメリット

他方で、②公正証書遺言は、公証人のほか、証人2名が立ち会って、ご本人の意思や能力を慎重に確認した上で作成されるものです。

この際、遺言者が遺言の内容を理解していないなど公証人達からみて遺言を作成する能力がない場合には遺言は作成されませんので、将来遺言の無効を主張される可能性が少ない種類であるといえます。

また、公証役場で遺言書を保管するため紛失や改ざんのおそれがありませんし、公証役場に問い合わせをすることで遺言書の有無の確認も可能です。

そのほか、自筆証書遺言で必要となる検認手続が不要であり、相続人の負担も少なくなります。

自筆証書遺言公正証書遺言
メリット・全て自分で作成をすれば費用がかからない・将来遺言無効を主張される可能性が他の方式と比較すると少ない
・公証役場で遺言書を保管するため紛失や改ざんのおそれがない
・遺言書の検索が容易
・家庭裁判所の検認手続が不要
デメリット・方式不備により遺言が無効となるおそれがある
・死後、遺言書が発見されない可能性がある
・紛失や改ざん・破棄のおそれがある
・家庭裁判所の検認手続が必要
・公証役場に支払う費用が発生
 

3. お勧めの遺言書は何か

自筆証書遺言は費用がかからないという程度のメリットしかなく、他方で、方式不備により遺言が無効となる可能性があるなど、非常に大きなデメリットがあります。

他方で、②公正証書遺言には、公証人という専門家によるチェックを受けたうえで作成されており、方式不備により遺言が無効となる可能性は限りなく低いといえるなど多くのメリットがあります。

とくに方式不備により遺言書が無効となった場合には、遺言書を作成した意味自体が失われてしまいます。

こうした理由から、当事務所では、②公正証書遺言の作成をお勧めしております。

4. 公正証書の作り方

公正証書の作成がお勧めであるとして、公正証書はどのように作成すればよいのでしょうか。

当事務所で公正証書を作成する場合の一例をご紹介すると、概ね次のような手順となります。

  1. お問合せ/ご相談
  2. 親族関係と財産関係の確認
  3. 遺言内容の確認(遺言内容の適否や具体的内容を決めかねている場合には専門家としての立場からアドバイスをさせて頂きます)
  4. 必要資料の収集(可能な範囲で当事務所で収集致します)
  5. 遺言書案の作成(依頼者様と確認しながら公証役場に提出をする案文を作成します)
  6. 公証役場との調整(遺言書を作成する日時等について決定致します)
  7. 公証役場にて遺言書の作成

5. 公正証書遺言作成にあたりご準備いただく事項

(1)遺言書の内容を決めること

公正証書遺言を作成することを検討されている場合には、まずはどのような遺言を遺したいのか、おおまかな内容をお考えいただけるとよいと考えられます。

もっとも、どのような内容にするのか迷っているなど内容が決まっていないときには、ともに考えていくことも可能です。

(2)資料を集めること

遺言の内容を考えるのと並行して行っていただきたいのが、どのような財産があるのかを示す資料を収集することです。

例えば、不動産であれば全部事項証明書(法務局で取得できます)、保有する金融機関の通帳、保有する証券が分かる資料など多岐に及びます。

具体的に、どのような資料が必要かは財産状況により異なりますので、お話をお聞きする中で、収集いただきたい資料をお伝えすることとなります。

なお、不動産の全部事項証明書などは当事務所においても取得可能です。

6. 遺言の内容の実現

有効な遺言書を作成された場合、遺言書に書かれた内容を実現する必要があります。

例えば、自宅をお子様一人のものとする内容であれば登記手続を行うことなどです。

遺言書作成にあたってはこうした点をも見据える必要があります。

こうした遺言内容を実現するためには、公正証書遺言であらかじめ遺言執行者という遺言内容を実現するために活動を行う人物を指定しておくことが円滑な相続手続に繋がります

7. 弁護士に公正証書遺言の作成を依頼する場合のメリット

弁護士に公正証書遺言の作成を依頼する場合のメリットとしては、つぎの点が挙げられます。

  1. 遺言書の内容について専門的アドバイスを受けたうえで作成することができる。
  2. 遺言書作成にあたり財産の確認を行うことができる。
  3. 遺言書作成にかかる事務的な手間を大幅に減らすことができる。
  4. 遺言執行者の依頼を行うなど死後の円滑な手続についても相談を行うことができる。

著者情報

大澤 一雄

弁護士
大澤 一雄

上智大学法科大学院卒業後、司法修習修了。

2022年に大澤法律事務所開設。

趣味は水泳。

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