相続が発生したときに遺言があれば、これに従った遺産の分配がなされることとなります。それでは、遺言があるかどうかについて、どのように確認すればよいでしょうか。
ここでは、遺言のうち、公正証書遺言について、その存否及びその内容の確認方法を解説します。
目次
1 遺言書の種類
遺言書には、①公正証書遺言、②自筆証書遺言及び③秘密証書遺言があります。
以下それぞれについて、その存否等の確認方法を解説します(③の利用例は多くないと想定されることから、ここでは説明を省略しています。)。
2 公正証書遺言の確認方法
公正証書遺言とは、公証役場という公的機関において、公証人の関与のもと作成をする遺言書です。
公証役場において作成をするため、作成した役場において、遺言書原本が保管されています。
この公正証書遺言の確認方法ですが、一般に次のような手順で確認することが考えられます。
(1)手順1:公正証書遺言の検索
平成元年以降に作成された公正証書遺言については、日本公証人連合会という公的機関で、遺言情報管理システムが構築されています。
このシステムを利用することで、全国の公証役場で作成した遺言公正証書の情報(作成した公証役場がどこか、公証人名、遺言者名、作成年月日などです。)を知ることができます。
そこで、手順1として、最寄りの公証役場で、上記システムにより公正証書の存否について検索することとなります。
これにより、遺言検索照会結果通知書を受け取ることで、遺言作成日、証書番号、遺言作成役場などが分かることとなります。
遺言書の検索は、誰でも利用できるのではなく、相続人等の利害関係人に限られています。また、被相続人の除籍謄本、申出者が相続人であることを示す戸籍謄本等の必要書類が必要となりますので、必要書類について事前に公証役場に確認しておくことが必要です。
(2)手順2:公正証書遺言の写しの取得
手順1で検索した結果に従い、公正証書遺言が保管されている公証役場から当該遺言書の写しを取得することとなります。
ここで注意したいのは、作成した役場で手続をする必要がある、ということです。
例えば、八王子公証役場で作成した公正証書遺言は、八王子公証役場でなければその写しを取得できず、立川公証役場では取得できません。
これは、遺言書原本は遺言書を作成した公証役場において保管されているためです。
これにより、公正証書遺言の内容を確認できます。
(3)具体例
手順1及び手順2について、具体例をもとに説明すると、次のとおりです。
- 【手順1】被相続人である父が死亡したため、相続人である子(立川市在住)が立川駅南口にある立川公証役場において、遺言検索をしたところ、八王子公証役場において作成したことが判明
- 【手順2】八王子駅にある八王子公証役場に赴き(または郵送により)、必要書類を提示することで、公正証書遺言の写しを取得(→これにより目的達成)
3 自筆証書遺言の確認方法
自筆証書遺言とは、主に遺言者が手書きで作成する遺言書であり、所定の要件を満たさないと遺言が無効となるものです。
この自筆証書遺言については、その保管先に応じて、次のように考えられます。
(1)遺言者が保管している場合
自筆証書遺言を作成した本人が保管している場合ですが、自宅、貸金庫等を探すなどして、確認することとなります。
これにより、遺言を確認したときには、家庭裁判所での検認手続(遺言書を発見した相続人等の申立てにより、相続人に遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、形状、日付、署名など遺言書の内容を明らかにして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続で、家庭裁判所において行われます。)が必要となります。
(2)法務局が保管している場合
自筆証書遺言を対象とした法務局による「自筆証書遺言書保管制度」というものがあります(令和2年より開始)。
遺言者がこの制度を利用している場合には、相続人などの利害関係人が、法務局で手続をすることで、遺言書の存否及びその内容を確認することができます。
なお、法務局による保管制度を利用したときには、3(1)の場合とは異なり、検認手続は不要となります。
4 複数の遺言書が確認された場合の取扱い
遺言書を確認した結果、複数の遺言書が確認できた場合も考えられます。
複数の有効な遺言が存在する場合については、民法1023条第1項が定めています。
すなわち、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」、というものです。
これにより、複数の遺言が家訓された場合について、前の遺言は、後の遺言と抵触する限りにおいて、撤回されたものとみなされます。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 略